「ぽっかぽか」第62話
「おくすりのじかん」

――あすかが触れた、小さな命の誕生と、静かな死――
(YOU掲載時の表紙リード)

オリジナル初出 YOU 2004年12月15日号・No.24/2004年12月1日発売
単行本収録 コミックス、文庫未収録

(2004/12/02)

今年もまた、冬の新作が発表されました。
今回はあすかの入院という、長い連載の中でも初めてのシチュエーションです。
いつも元気なあすかも、熱を出して少し苦しそうです。とはいえ今後の話に影響するほどの大きな病気ではなく、「様子を見ましょう」というだけです。深見先生は入院するという設定が欲しかったのでしょう。
そんなわけで病気の内容はよくわかりませんが、あすかはひと晩だけ、初めての入院生活を体験します。麻美ももちろん付き添いですが、慶彦は仕事で来られません。
夜中、あすかは目を覚まし、たまたま席を外していた麻美を探しに院内を出歩きます。たまたま開いていた扉から別の病室を訪れ、そこに入院している「エイコさん」というおばあちゃんに出会います。
……以後のストーリーは読んでからのお楽しみということにしますが、近年の中でも今回は出色の内容です。話の展開は1998年の「こどものお茶会」に似ているのですが、子どもとお年寄りを通じて生と死について学びを得られる素晴らしいストーリーでした。
最近の「ぽっかぽか」は同じような話が続いていて、失礼ながらさすがの深見先生もパワーダウンした印象を感じることもありました。「変わらないこと」が「ぽっかぽか」の良さでもあるので、わたし自身はそれでも十分満足なのですが、若い世代の新しい読者へのアピールという点では厳しいものがあるんじゃないかな、なんて思っていました。
でもこの話に出てくるセリフは、若い作家さんには到底書けないものだと思います。「命」の重みが軽くなり、粗末に扱われるニュースが多い今の世の中、ぜひとも多くの人に読んでもらいたい話です。単行本化にはまだ間があるので、これだけのためにYOUを買っても損はないと思いますよ。


ところで……
今回の入院では、麻美と一緒にもうひとりおなじみの登場人物があすかに付き添いました。「ぽっかぽか」ではおなじみの「くんちゃんのおとーと」、「あたら」です。
しかし、今回久々に登場した彼は「あたらしさん」と呼ばれていました。
あれ? ドラマでは「あたらしさん」、原作では「あたら」だったはずでは……?
どうやら深見先生、ドラマの知名度を考え、こういう細かい設定はドラマに合わせるようにしたみたいですね。
わたしのハンドル名の危機?(^^;) いや、わたしはせっかくなのでずっと「あたら」で行こうと思います……。(笑)


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