「ぽっかぽか」第49話
「魔法のぶらんこ」

――子供の頃のぶらんこ、今では怖くてできないくらい大きくこぐことができた――
(YOU掲載時の表紙リード)

オリジナル初出 YOU 2000年4月15日号・No.8/2000年4月1日発売
単行本収録 コミックス第11巻、文庫第8巻

(2002/12/13)

季節は春、麻美とあすかの二人は陽気にさそわれてお散歩するところからお話が始まります。
麻美はOL時代の旧友に会い、慶彦は泊まりで出張というシチュエーションです。
以前に何度か登場している「あたらのはは」智子に加え、今回の話の中心となるキャラ「原田」の2人が麻美を尋ねてきます。今も海外を飛び回っている原田は「めちゃくちゃおしゃれでブランド狂」だった麻美の変わりように驚きあきれるばかりです。でも麻美は「こんな暮らししかできないけど、見栄は張ってない。今の自分って結構好き」と何の迷いもなく言い切るのです。以前から今の麻美を知っている智子は、そんな2人のやりとりを面白がって見ています。結局、原田はわけがわからないまま、何となく「そういうものか」と納得してしまうのです。
「ぽっかぽか」は専業主婦の幸せを描く作品なので、キャリアウーマン的な生き方とはどうしても対立する部分があります。でもここでの麻美と原田はお互いの価値観をぶつけあって白黒はっきりさせるようなことはしていません。正確には麻美のほうが原田の生き方に対して「それもすてきなこと」と認めているのでそういう展開にはなりようがないのですが、どちらが正しいかなんてナンセンスで、異なる価値観を受け入れられる人になってほしい、というメッセージが込められています。事実、現在の麻美に対する原田の感想は「よくわかんない」でした。「あなたも結婚して子どもを産めばわかるようになる」と諭すのではなく、「よくわかんない」で終わらせているのがポイントだと思いました。

ただ個人的にはこの種の内容、つまり「自分を磨き続ける独身生活」対「肩の力を抜いた主婦生活」という二項対立は、それ自体既に前時代的な印象が拭えないように思います。この先行きの見えない低迷した世の中では、たとえ独身でも原田のように派手な生活ができる人は少なく、一人でいることに疲れと不安を感じている人のほうが多いのではないでしょうか? 今回のストーリーは1987年の第2話「かんからころん」にそっくりなのですが、バブル絶頂期と今とではだいぶ世の中は違いますよね。むしろ今なら、実際にはお金はないのに「見栄」だけであの頃の消費行動を続けてしまう人たちを描いたほうがリアルだったのかな、という思いもしました。


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